サシャ・ブラウス



1: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:05:05 ID:xp/bTIWS0
アニメ12話あたりからのお話です
原作との矛盾点はすまん

引用元: ジャンとサシャが仲良くするスレ



2: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:06:10 ID:xp/bTIWS0
死体の処理ってのは、何度やっても慣れないもんだよ。
俺の隣で朝飯喰ってた連中が、
晩飯の前にはピクリとも動かず、冷たくなってやがる。
ダチのマルコって奴もいつの間にか、
キャンプファイヤーのタネにされちまってた。

3: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:06:58 ID:xp/bTIWS0
しかも、死体の処理には常に伝染病の危険も付きまとう。
三ヶ月に一回、全員が採血されて予防注射も打たれてるが
どこまで効くのやら。
そういやガキの頃も、遠くの村から医者が訪ねてきて、
流行り病の対策とか言って採血と注射をされたっけな。
その注射がやたら痛くて、お陰で今でも注射は苦手だ。

4: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:08:32 ID:xp/bTIWS0
晩飯を腹に押し込んで、そのまま寝る気にもなれなかったから
兵舎裏の空き地でボーっと夜空を見ていた。満天の星空だ。
ミカサが隣にいれば言うこと無いんだが、
この敷地内で、エレンとミカサが仲良く星を見てると思うと
胸が悪くなるね。

5: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:08:57 ID:xp/bTIWS0
背後で足音がして、コニーの脳みそくらい小さな期待を抱いて振り返ると
予想通りの期待はずれで、サシャが歩いてきた。
柄にも無く陰気な顔してやがって、無言で兵舎の壁にもたれると、
そのまま空を見上げて動かなくなった。
よう、と声をかけると、沈んだ声でどうも、とだけ返された。

6: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:09:57 ID:xp/bTIWS0
湿気た面の二人が星を眺めたとこで、まるで気分は晴れねえ。
何だか凄い気まずくなって帰ろうとした時、サシャが口を開いた。

「今日は、疲れました。とても」

なんつーか、いろんな意味で聞きたくない言葉だった。
「とても、とても疲れました。疲れた。ごめんなさい。疲れました」
疲れた、と言うたび、サシャの口端が下がっていき、肩が震えだした。
「わたしは、仲間を」

7: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:10:29 ID:xp/bTIWS0
それ以上言うな、と俺は耳をふさいだ。
分かっちゃいたが、改めて思ったね。地獄だ。壁の外は。
俺たちは今日、新たな地獄を見た。

8: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:12:07 ID:xp/bTIWS0
作戦終了の煙弾が上がり、巨人樹の森から帰還する最中だった。
多数の死傷者が出たせいか隊列陣形が変わり、
俺とサシャは隊列左翼の荷馬車に居たんだが、
馬鹿が二人、命令を無視して仲間の死体を拾いに行った挙句
奇行種を二体、中央の隊列に引き連れて戻ってきやがった。

9: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:15:39 ID:xp/bTIWS0
まるで戦闘には向いてない平原を通過中で、
襲われたら全滅の危機さえあった。
しかも、その奇行種に呼応し、
右翼、左翼の隊列にもそれぞれ巨人が現れた。
もう荷馬車の上は阿鼻叫喚だったね。

10: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:40:53 ID:xp/bTIWS0
でも、そのパニックは、中央の隊列のある行動で瞬時に収まった。
唖然として声も出なかったと言うべきかな。
あいつら、巨人に向かって仲間の死体を放りやがったんだよ。

11: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:41:29 ID:xp/bTIWS0
みんな薄々は思ってたんだ。
積んでる死体を捨てれば、巨人から何とか逃げ切れるんじゃないかって。
皆が皆、仲間の死体をわざわざ拾いに行くような熱血漢でもないしな。
でも踏み切る勇気が無かった。色々なものに邪魔をされた。

ただ、あの人たちは違った。
やっぱりトップに立つ人間ってのは冷静で非情だ。
最大の利益を得るためには、仲間の死体くらい簡単に切り捨てちまう。

12: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:42:37 ID:xp/bTIWS0
中央の隊列は、死体を捨てたお陰で逃げ切れそうな感じだった。
そこからだよ、何か異様な雰囲気が、俺たちの荷馬車を包んだんだ。

あ、いいんだ、捨てても。
仲間の死体捨てても。
生き残る為だし、仕方ないよね。
しかたない、しかたない。

13: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:46:06 ID:xp/bTIWS0
それまでの逡巡、躊躇、葛藤。
その全てを「あいつらもやってたし、いいよね」というただ一つをの言い訳を盾に
一斉に塗りつぶしに掛かった。誰もがそんな顔をしていた。
精悍な兵士の顔つきはなりを潜め、卑屈さすら感じさせるような顔をしていた。

14: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:51:41 ID:xp/bTIWS0
しかもだ。
そこまできても、誰も死体に手をかけないんだよ。
許可は出たぞ。さあ、誰かやれ。誰か。
そして上官の一人が、癇癪を起こした子供みたいに叫んだ。
おい新兵!新兵はいるか!早く死体を捨てろ!

15: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 14:59:55 ID:xp/bTIWS0
後はまあ、お察しの通りだ。いやぁ、だいぶまいったね。
一人捨てるたびに、心を容赦なくヤスリで削られてるみたいだった。
ごりごり、ごりごりとな。
特に新兵なんか、お世話になった先輩方が大勢居た。
死体の中にも、泣きそうな面してた連中にも。

16: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 15:13:19 ID:xp/bTIWS0
こいつら、これから本当に信用して良いのか?

俺たち新兵は、戦場で一番感じちゃいけないものを感じてしまった。

17: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 15:19:09 ID:xp/bTIWS0
今日という日を思い返して、俺はますます陰鬱な気分になった。
嗚咽を噛み殺すサシャに何か言おうとしたが、
俺自身が色々疲れきってて上手い言葉が出てこなかった。

だから、何か当たり障りの無いことを言おうとして
「次の休みに街へ行くぞ。メシ奢ってやる」と
何とも微妙な台詞を吐いちまった。

18: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 15:25:53 ID:xp/bTIWS0
まあ元気出せよ、とかじゃあ何となく素っ気無い感じがするし
かと言って無言で抱きしめるなんて真似はもってのほかだし
当たり障り無く、かつあまり素っ気無くならず、いい塩梅に慰めようとしたんだ。
それなのに、なんとまあ。

19: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 15:30:33 ID:xp/bTIWS0
ちょいといなくなるけど誰か見てたらごめんね

20: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 15:50:46 ID:xp/bTIWS0
それでも、顎の先からぽたぽたと涙を滴らせていたサシャは、
とてもゆっくりと顔を上げてくれた。
こいつの顔、じっくりと見たこと無かったが、涙でぬれたせいか
まつげが凄く長い事に気がついた。

22: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:05:56 ID:xp/bTIWS0
ハの字だった眉と、への字だった口が緩んでいき、
泣き顔ながらくすっと笑ってくれた。
結果オーライってやつだ。

23: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:08:53 ID:xp/bTIWS0
幸い、俺の「無難でシンプルに、かつ素っ気無くならずに慰める」という意図を汲んでか
ご馳走様です!なんて言わずに、ありがとうございますとだけ言った。
なんだ、空気読めるじゃねえかこいつ。

24: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:09:52 ID:xp/bTIWS0
だが、サシャの物分りの良さが俺に新たな疑念をもたらした。
俺、サシャに凄く浅はかな野郎だと思われてんじゃねえか。
安易に食べ物で釣りやがってって。しかもその気じゃないくせに。

25: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:11:00 ID:xp/bTIWS0
持ち前のケツ穴の小ささに、心身の疲労が相まって、
ウサギみてえな思考回路になっちまってた。
だから、「いや本当だぞ、本気だからな。お前の好きなもん食わしてやる」
と自分をフォローした。

26: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:11:59 ID:xp/bTIWS0
いやお気持ちだけで結構ですよ、とあわてるサシャに食って掛かった。
てめえ、俺の飯が食えねえのか。
まったく何を言ってるのか自分でも分かんなかったし、
内心「冗談だから!冗談だから!」と連呼していた。

27: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:15:43 ID:xp/bTIWS0
サシャは呆れたような驚いたような、でも若干の喜色が伺えるような
なんとも微妙な顔をしていたが、やや間を空けて、
にこっと笑い、じゃあお願いしますと言った。

28: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:18:06 ID:xp/bTIWS0
そんなわけで、俺はサシャに飯を奢る事になったんだけど、
約束が果たされるのはずいぶん先になりそうだった。
今回の作戦失敗が調査兵団に与えた打撃はあまりに大きく、
組織の存続自体すら危ぶまれる状況だった。

29: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:23:37 ID:xp/bTIWS0
俺たちも何だかんだと忙しくなるだろう。
でも、隣のサシャを見ると、ニコニコしていたから
まあ何とかなるさ、と思えた。

30: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:24:14 ID:xp/bTIWS0
さて、話は数日後に飛ぶ。
女型の巨人捕獲作戦の直後、
俺はエレンの影武者ってことで不本意ながら王都に召集されていたんだが、
存外、すぐに自由の身になることが出来た。
たぶん団長あたりが上手く立ち回ってくれたんだと思う。
さて久々にゆっくり出来る、と思ったんだが、
すぐさまある作戦に放り込まれた。

31: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:27:09 ID:xp/bTIWS0
ある日、上官の命令でトロスト区に召集された俺は、
作戦の内容を聞き、調査兵団の権威の失墜を実感した。

なんでも、カラネス区と巨人樹の森の中間地点、
つまりトロスト区の東北東の山に、巨大な鉱脈があるらしいんだ。
俺たちの武器や荷馬車のサスペンションなどに用いられるレアメタルだ。

32: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:27:52 ID:xp/bTIWS0
今回の任務は、兵器関連の技術者や鉱山掘削の専門家たちを現場まで護衛し、
可能であれば掘削のメドを立てる事だ。
護衛と言えば聞こえはいいが、
実際は炭鉱夫の真似事でもさせられるんだろう。

33: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:30:25 ID:xp/bTIWS0
こういった軍事開発の事情は普通、最高機密だが、
それでも俺ら下っ端に任せるあたり、
人材と物資は相当切羽詰ってるんだろう。
たぶん技術屋の連中も替えが利くやつらだし、
召集された兵士十名も、俺やサシャみたいな新兵、あるいは二年目だ。

34: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:32:14 ID:xp/bTIWS0
只一人、目ん玉が飛び出るような地位の人間が居たが、
機密情報を扱う以上は致し方なく出向いたってとこだろう。

「本作戦の情報は一切の持出、口外を禁ずる。
不穏な動きをしたら、悪いがその場で拘束する」
エルヴィン団長は、皆にそう伝えていた。

35: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:33:26 ID:xp/bTIWS0
早朝、トロスト区の門前を出発した俺たちは、
数台の荷馬車を従え、目標地点まで一気に移動した。

36: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:38:48 ID:xp/bTIWS0
しかしなあ、こんな捨て駒みたいなメンバーに何故団長が居るのか。
機密作戦って事もあるんだろうが、
それ以上に憲兵団や上層部からの圧力がきついんだろう。
今後も兵団を構えていたければ、少しでも役に立って見せろって事か。
もしくは、俺たちを監視するため。
いずれにせよ、それほど前回の作戦失敗は痛手だったんだ。

37: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:42:34 ID:xp/bTIWS0
幸い、巨人の襲撃を受ける事無く現場に到着し、
作業に取り掛かることとなった。

山の中腹あたりに、切り立った崖がそびえており、
俺たちは技術屋をマンツーマンで抱えながら
立体起動装置で岸壁にぶら下がっていた。
ダウジングとかいう装置をつかって、鉱脈を調べるらしい。

38: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:43:05 ID:xp/bTIWS0
しかし、なんでむさ苦しい男と体を縛られて密着しなきゃならんのだ。
俺はまだいいが、俺の右隣にぶら下がっていたサシャはもっと不快そうだ。
サシャが抱えているオッサンの背中には、
まあ、その、たっぷりと当たっているんだろう。

39: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:45:33 ID:xp/bTIWS0
何度か崖を上下しているうち、崖の真ん中辺りに洞窟を発見した。
地上から15メートルほどだろうか、岸壁に人が入れそうな穴が開いている。
団長に報告すると、同じような洞窟がもう2つあるという。

40: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:50:11 ID:xp/bTIWS0
俺たちは、兵士二名と技術者一名の三名一組に分かれ、
洞窟を探検することになり、俺はサシャと組む事になった。
最近、何だかサシャと絡むことが多いなあと思っていると
なんか最近ジャンと絡むことが多いですね、とサシャが言った。

41: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:50:48 ID:xp/bTIWS0
技術屋のオッサンを抱えて洞窟に入ると、
オッサンは目を輝かせて仕事に取り掛かった。
良く分からない器具で壁をなぞったり、
つるはしで岩をトンカンやったりしている。

42: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:52:16 ID:xp/bTIWS0
俺らも手伝おうとしたんだが、専門家の領域だと断られたもんだから、
黙ってカンテラを持って後ろで立っていた。くそ、鉱物オタクめ。
俺らをよそに、オッサンはずんずん奥に進んでいった。

43: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 19:54:42 ID:xp/bTIWS0
やる事もないから、手ごろな岩に腰掛け、しばらくサシャと駄弁っていた。
生まれのこと、趣味、よく遊びに行く店など、他愛無い話だったが、
よく考えりゃ、こんなに長いこと二人だけで話したこと無かったなあ。

44: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 20:20:53 ID:xp/bTIWS0
こいつ、思ったより知的だし物知りだし、
何より話し上手で聞き上手だから話してて飽きない。
そうかと思えば、会話の随所で食い意地が張った発言をしたり、
熱弁をふるったりするから笑える。

45: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 21:00:40 ID:xp/bTIWS0
そういえば、とサシャがポツリと言った。なんだ、と聞くと、
約束忘れないでくださいね、と悪戯っぽく笑った。
こいつ覚えてやがったか。
まあ俺も、こいつの胃袋に財布を放り込む覚悟は出来ている。
帰ったらお前の好きなとこ連れてってやると言うと、
ジャンとデートとは新鮮ですね、とまた笑った。

47: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 21:06:23 ID:xp/bTIWS0
……こいつ、いい動きするじゃねえか。
よく見りゃこいつ、目も大きいし鼻も高い。普通に美人の部類だよなあ。
カンテラの明かりのせいか、サシャの顔が普段と違った感じに見える。
不覚にも、不覚にもだが、少しドキッとした。

48: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 21:08:07 ID:xp/bTIWS0
保守あざっす
ちょっとご飯食ってくるから抜けます
焼肉が待っておるでな

49: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:31:27 ID:xp/bTIWS0
おーい、というオッサンの声で我に返った。
洞窟の奥から声がするので行ってみると、洞窟の出口があるじゃねーか。
出口に立ってみると、急勾配の崖に、
入り口と同じように空いている穴だと言うことが分かった。
そこからは、遠くにそびえるウォール・マリアが見える。ついでに青空がきれいだ。
山の反対側に出ちまったなあ、とオッサン。
ついでだから、こちら側の岸壁も調査することになった。

50: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:31:57 ID:xp/bTIWS0
じゃあ嬢ちゃん、俺を抱えて崖を降りてくれと
オッサンが言うもんだから、もちろん俺がオッサンを抱えて崖を降りた。
この野郎、さっきサシャの胸が背中に当たって味を占めたな。そうはさせねえ。

51: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:33:46 ID:xp/bTIWS0
いったん崖を降りて調査箇所を検討していると、崖の頂上に一瞬、
ちらっと何かの姿が見えた。人か獣か、逆光で分からなかったが。
サシャとオッサンは気づいていないようだ。見間違いか?
ともかく、俺はオッサンを抱えて崖に張り付くことになった。

52: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:34:56 ID:xp/bTIWS0
作業を始めて三十分くらい経った頃だろうか。
不意に、崖の上から砂利がパラパラと続けざまに降ってきた。
何だ、崖崩れの前兆か?
オッサンが一旦作業を中断しようと言うので、
崖を降りようとしたその時だ。
少し離れたところでぶら下がっていたサシャが悲鳴を上げた。

53: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:37:09 ID:xp/bTIWS0
馬鹿でかい岩が、俺たちめがけて降ってきやがった。
潰される、と思った瞬間、横からサシャが突っ込んできて俺たちを抱えると
そのまま崖を滑り降りて地面に着地した。すさまじい身体能力だ。
俺たちは全力で走り出した。少しでも崖から離れなければ。

54: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:41:15 ID:xp/bTIWS0
崖から百メートルほど離れ、振り返ると、もう一つ大岩が俺たちに飛んできた。
畜生、何なんだ一体!?
三人して地面に身を投げ出す。幸い、岩は誰にも当たらなかったが、
オッサンは地面に頭を打って伸びちまった。
これは落石じゃねえ。投石だ。
崖の頂上に目をやった俺は、信じられないものを見た。

55: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:42:23 ID:xp/bTIWS0
巨人だ。しかも、全身が毛で覆われている。手長猿の化け物みてえだ。
こんなやつ見たことない。ニヤニヤと笑いながら大岩を抱えてやがる。
こいつが、俺を狙って岩を投げたってのか?
あり得ない、巨人がそんな事するが訳ない。
しかし、現状を見るに、こいつがやったとしか考えられない。

56: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:43:14 ID:xp/bTIWS0
そして、その大猿は、混乱する俺の頭ん中を、
いよいよ引っ掻き回しにかかった。
「あら、外しちゃったか」
そいつ、喋りやがったんだよ。

57: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:44:16 ID:xp/bTIWS0
はっきり聞こえた。本当に何なんだこいつ。
喋る巨人っておい。悪い夢でも見てるみたいだ。
サシャを見ると、恐怖と怒りが入り混じったような、
物凄い表情で大猿を睨んでいる。手が震えている。
何とか逃げなければと考えていると、
大猿がもう一言「じゃ、あとは任せたから」と呟き、崖の向こうに姿を消した。

58: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:45:24 ID:xp/bTIWS0
任せる?
俺は、すぐにその意味を理解した。
十五メートル級巨人が二体、崖の斜面を滑り降りてきやがった。
あの大猿、もしかして、もしかしてだが
巨人を操る事すら出来んのか……?

59: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:46:13 ID:xp/bTIWS0
いずれにせよ、この状況は最悪だ。
非戦闘員を一人抱えたまま戦うなんて無理だ。
そもそも、周囲には樹木も建物も無い。完全なる平原だ。
洞窟に戻ろうにも、崖の斜面に辿り着くまでに巨人と接触しなければならない。

そして、極めつけ。
度重なる作業で、立体起動装置のガスが切れ掛かっていた。

60: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:46:50 ID:xp/bTIWS0
地面に着地した二体の巨人が、こちらに向かって走ってくる。

どうする。どうしたらいい。

いや、答えはとうに分かってんだよ。

巨人との距離はぐんぐん縮まっていく。

早鐘を打ったように、心臓が跳ね回る。

頭の中が、死の恐怖で塗り潰されていく。


俺は、震える声でサシャに伝えた。

61: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:47:31 ID:xp/bTIWS0
お前なら、俺より今日の作業量が少なかった分、
まだガスに余裕がある筈だ。
オッサンを抱えて洞窟まで逃げろ。
俺が時間を稼ぐ。

62: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:48:41 ID:xp/bTIWS0
そんな、とサシャが引きつった声を上げた。
しかし、現状これしか助かる道は無い。
こんなとき、団長なら迷わずこうするだろう。
最大の利益を得るためには、切り捨てる勇気が必要だ。
例えそれが、自分の命であってもだ。
俺は、兵士なんだ。

63: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:49:41 ID:xp/bTIWS0
死ぬ覚悟なんかこれっぽっちも決まっちゃいねえ。
歯は鳴り、手は震え、足はすくんでいる。
生まれたての小鹿みてえだ。

64: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:50:24 ID:xp/bTIWS0
でも、悪くない気分だ。そう思い込む。
美人のために散るなんざ、サイコーにクールじゃねえか。
死に急ぎ野郎より先に逝くのは気にいらねえが、まぁこんなオチもアリだろ。
無為に喰われるより、ちょっとばかし華が持てそうだ。

65: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:52:30 ID:xp/bTIWS0
二体の巨人が、すぐ目の前まで迫っている。
サシャは、ぼろぼろと涙を零しながら
すぐ仲間を呼んできます、それまで死なないでください。
と言った。

66: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:53:32 ID:xp/bTIWS0
ああ、こいつも兵士だ。
仲間を切り捨てる覚悟を持っている、強い兵士だ。
良い仲間に出会えたもんだよ、まったく。

67: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:53:57 ID:xp/bTIWS0
さて、やるか。
どっちか一体は道連れだ。
仲良く心中といこうぜ。

68: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:54:37 ID:xp/bTIWS0
俺は煙弾用の銃を構え、一体の顔面に、
夜間信号用の閃光弾をぶっ放した。
それを合図に、オッサンを背負ったサシャが、矢のように駆け出す。
目潰しを食らった巨人の足元を駆け抜け、
振り返らずに走り去った。
さて、これで心配は無くなった。
俺は、凄まじい速さで迫りくる、もう一体の巨人に突っ込んでいった。

69: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:55:37 ID:xp/bTIWS0
巨人の右足外側、踏み潰されるギリギリの所にスライディングで飛び込んだ。
馬鹿でかい足が物凄い風圧を生みながら、俺の右横を通り過ぎていく。
お互い慣性で止まれない。目標への距離、約十五メートル。

70: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:56:08 ID:xp/bTIWS0
巨人の背後に回った俺は、巨人が振り向く前にすぐさまアンカーを射出した。
放たれたアンカーが、巨人の右アキレス腱に食い込む。
そのまま肉薄し、腱を切ろうと刃を振り上げた。
刹那、巨人は半身をこちらに向け、その巨大な手を振り下ろした。

71: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:56:57 ID:xp/bTIWS0
ミンチにされる直前、何とかアンカーを巨人の右肩に射出し迎撃を躱す。
ワイヤーを思い切り巻き取り、
バカみたいに長い腕を駆け上がりながら一直線にうなじを目指す。
巨人の肩越しに、抜ける様な青空が広がっていた。

72: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:57:40 ID:xp/bTIWS0
空気を切り裂く轟音と共に、左手が俺を叩き潰しにかかるが、
既に首元へと飛び出した俺を潰す事は叶わず、
自らの右肩を破壊するに留まった。
湧き上がる蒸気の中、ブレードを握りしめ、全力で踏み込んだ。

73: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 22:59:21 ID:xp/bTIWS0
刃の重みと体のスピードを全て遠心力に叩き込み、コマの様に回転する。
全身が刃となり、巨人の首元を一瞬にして切り裂いた。
ブレードに伝わる、筋肉の繊維を一本、また一本と断っていく感触。
その全てが掌を通り過ぎ、俺が青空の下へと躍り出した時、
背後で蒸気に包まれながら、巨体が崩れ落ちていった。

74: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:00:33 ID:xp/bTIWS0
世界の全てが、とてもゆっくり動いていた。
頭上では、太陽が能天気にサンサンと輝いてる。
風も穏やかだし、空気も心地いい。
もし、もし何かが何処かで違っていたら、
こんな日に、サシャと飯食いに行ってたんだろうな。
くそ、もっと早く仲良くなっておくんだったな。

75: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:02:14 ID:xp/bTIWS0
あれ、なんだ、こういう時って、ミカサの事を考えるんじゃねえのか。
今までの記憶がフラッシュバックしたりさ。
死ぬときってのも、結構どうでも良いこと考えるもんなのかな。

76: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:05:46 ID:xp/bTIWS0
ちがうか、サシャだからか。
俺はサシャの命を預かり、サシャは俺の命を受け取った。

一瞬だったけど、俺らは命を託しあった。

畜生、最期の最期に、良い仲間が出来ちまった。
死にたくねえなあ。

77: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:14:28 ID:xp/bTIWS0
俺は、ガスが切れた立体起動装置を未練がましく握りしめ、
青空を眺めながら落ちていった。
まぁ、このまま地面に激突して死ねる訳でも無いだろうな。
真下で、もう一体の巨人が、でっかい口開けて待ってるもの。
まあいい、サクッと喰ってくれ。

78: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:18:05 ID:xp/bTIWS0
俺の作戦は、成功したはずだった。
でも、やっぱりここは地獄だった。

79: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:24:09 ID:xp/bTIWS0
俺の作戦は、成功したはずだった。
でも、やっぱりここは地獄だった。

118: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:57:06 ID:UFOzQrid0
>>79と104でダブってるけど許してちょ

80: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:27:59 ID:xp/bTIWS0
ひでぇよ、あんまりじゃねぇか。
何だって神様は、こんなガタガタの世界なんか作ったんだ。
ふざけんなよ、期待させやがって。

81: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:34:12 ID:xp/bTIWS0
サシャがどうか、どうか逃げられますようにと祈りながら、
俺は巨人の口に呑み込まれていった。

82: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:40:20 ID:xp/bTIWS0
巨人の食道を通る時に、左腕と右足が折れちまったらしい。
幸い、噛みちぎられて死ぬ事は無かったが、
考えてみりゃ身動きもできず、胃酸で溶かされて死ぬ方がついてないよな。
頭でもサックリ食いちぎってくれりゃ良かったのに。

83: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:43:40 ID:xp/bTIWS0
ダメだ、楽天的な事を考えてみようとするが、ダメだ。
怖い。怖い。このまま真っ暗な腹ん中で死ぬ。
徐々に溶かされて。嫌だ怖い。怖いよ。
死ぬ時は噛み砕かれるか叩き潰されるか、
とにかく痛みなんざ感じないくらいに一瞬で死ぬもんだとばかり思っていた。
怖いよ。暗い。真っ暗だ。甘かった。怖い。
気が狂う。

84: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:45:50 ID:xp/bTIWS0
とにかく灯りが欲しくて、全く馬鹿な事だが、
夜間信号用の閃光弾を腹ん中でぶっ放した。
人の目が耐えうる量を超えた、光の奔流が溢れ出し、
俺の網膜は一瞬のうちに焼き尽くされた。
これで完全に闇の中だ。この世で最も暗い場所の出来上がりだ。

85: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:47:12 ID:xp/bTIWS0
だが俺は、視力を失う直前、暗闇よりもっと怖いモンを見ちまったんだ。
一瞬だけ照らされた巨人の腹のなか。
そこには、何の意味もなく喰われた仲間たちが、
ドロドロに溶かされている姿があった。
さっきまで一緒に作戦を遂行していた連中だ。

86: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:47:52 ID:xp/bTIWS0
顔なんか誰が誰だか分からないくらい曖昧になって、
出来の悪い粘土人形みたいになっていた。
俺はこうして死ぬのかという想像が頭を支配しかけたが、
それ以上に俺を叩きのめしたのは、
数分ののち、サシャも同じ目に遭うという事実だった。

87: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:48:54 ID:xp/bTIWS0
死の恐怖と、誰ももう助けに来ないという絶望と、
サシャに命の危険が迫っているという焦燥と、怒りと、
下らない正義感めいた何かがごちゃ混ぜになって、
気が触れた様に叫びながら暴れまわった。
頭がおかしくなりそうだ。

88: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:49:26 ID:xp/bTIWS0
いや、実際に思考はとっくにショートしていた。
でなきゃ、全身を掻きむしったり、ましてや、
自分の手に噛み付いたりなんかしない。
痛みで何とか正気の淵に掴まっていた。

89: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:54:11 ID:xp/bTIWS0
ちょうど、親指の付け根の骨が、
肉の隙間から覗くくらいの噛み傷を負った頃だろうか。

不意に、潰れたはずの視界がグニャリと歪み、真っ赤に染まった。
どくん、と心臓が跳ね、身体中の血が逆流したみたいに暴れ出す。

90: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:56:31 ID:xp/bTIWS0
なんだ、これは。
脳味噌が沸騰する感覚。
背筋を駆け上がる爆発的な悪寒。
そして、身体中に弾けた怒り。
視界が白く染まる。

91: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:58:25 ID:xp/bTIWS0
気がつくと、俺は吼えていた。
俺の喉を押し広げ、迸った叫び声は、確実に人間のそれではなかった。
野太く、低く、だけど大地を揺るがすような絶叫。
どうした、何が起こった?
何で俺の視界に青空が広がってるんだ?
足元には、立ち昇る蒸気に包まれた、
内側から引き裂かれたような巨人の死体が転がっていた。
いや、巨人の死体にしちゃやけに小さくねえか?

92: 名も無き被検体774号+ 2013/11/04 23:59:20 ID:xp/bTIWS0
背後からけたたましい笑い声と、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
良かった、サシャは無事みたいだ。

振り向くと、俺と同じくらいの大きさの奇行種二体が、
豆粒みたいに縮んだサシャを前に、爆笑しながら殴り合っている。
悪い夢でも見てるのか。死にかけて頭がぶっ壊れちまったのか俺ぁ。

93: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:00:21 ID:UFOzQrid0
いや、分かってるよ。分かってる。
全く何でこうなったのか分からんが、一つだけ分かる。
俺は、今度こそサシャを救える。

94: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:01:13 ID:xp/bTIWS0
生まれてこの方、こんなにデカい声を出した事は無いね。
俺の咆哮に、奇行種どもの動きが止まる。
やけに大きな頭が、ぐるんとこっちを向いた。
相変わらず不気味なツラだ。顔半分を占めるでっかい目が、
俺の顔をじーっと眺める。
数秒、俺を見つめたのち、そのでかい目が三日月みたいに、
にぃっと細められた。

95: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:02:47 ID:xp/bTIWS0
気持ち悪い。この顔が迫ってきて無抵抗で喰われるなんざ絶対ゴメンだね。
二体の奇行種は突然、ケタケタと大笑いし始めた。
爆笑しながら、そのアンバランスな巨体に似つかわしくないスピードで、
弾かれたようにこちらへ走り出した。

96: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:06:50 ID:UFOzQrid0
拳を握りしめる。
メキメキと音が聴こえた。
その気持ち悪いデカイ目をサシャに向けたのか。

足を踏みしめる。
ずん、と大地に足がめり込んだ。
その下品な口で、サシャを喰おうとしたのか。
そうか。
死ね。

97: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:07:45 ID:UFOzQrid0
右足で思い切り地面を蹴った。
腰を目一杯捻り、足と、腰が生み出した動力を余すところなく肩に伝える。
更に肘をあらん限りの速度で稼動させる。
足から肘までをフルに使って生み出したエネルギーを、拳一点に。
乗せて。

98: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:10:09 ID:UFOzQrid0
予想よりずっと軽い手応えで、奇行種の頭が吹っ飛んだ。
なんだ、こんなに巨人ってのは力が強えのか。
そりゃ人間が紙クズみたいに殺されるわけだよ。
だが今ばっかりはその馬鹿力に感謝してやる。

99: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:34:19 ID:UFOzQrid0
もう一体の奇行種と相対する。

両の足は、肩幅に開き、さらに前後にも肩幅分の長さで開く。
やや膝を曲げ、低めに重心をとる。脇は締める。
左右の拳は顔の側面より少し前で構える。
これまで、何千回何万回と繰り返し、身体に染み込ませた姿勢だ。

100: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:34:56 ID:UFOzQrid0
馬鹿笑いしながら、奇行種が殴りかかってきた。

そんな子供の喧嘩みてえな動きで、
散々人間を殺してきたのか。腹が立つ。

巨人の右腕が振りぬかれる。
半円を描くように上半身を屈め、かわす。
その勢いを利用し、そのまま前傾姿勢で巨人の懐に踏み込む。
思い切り足を踏ん張り、一気に上体を起こす。
その勢いを全て拳に乗せ、全力で鳩尾に叩き込む。

101: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:44:37 ID:UFOzQrid0
するとどうだ。簡単に体を突き破ったじゃねえか。

間髪入れず、俺は巨人のうなじに噛み付いた。
思い切り、思い切り噛み付いた。
どうだ、これがお前らが人類に対してやってきた事だ。
苦しめ。苦しみぬいて死ね。

だが、俺の願いも虚しく、あっさりと巨人は崩れ落ちた。

102: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:49:52 ID:UFOzQrid0
周囲を見渡すと、もう巨人の姿は無かった。
崖の上にも、あの大猿は居ないようだった。

サシャを、救うことが出来た。
本当に良かった。

緊張が解けた瞬間、俺の意識は唐突にブラックアウトした。

103: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 00:53:49 ID:UFOzQrid0
目を覚ますと、視界は満天の星空で占められていた。
どうやら、荷馬車に寝かせられているようだ。
ズキズキと頭が痛む。二日酔いみてえだ。
体を起こそうとすると、アバラにも激痛が走った。
さて、どうしたもんかと考えていると、
突然何かが覆いかぶさってきた。

104: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:07:59 ID:UFOzQrid0
目を覚ますと、視界は満天の星空で占められていた。
どうやら、荷馬車に寝かせられているようだ。
ズキズキと頭が痛む。二日酔いみてえだ。
体を起こそうとすると、アバラにも激痛が走った。
さて、どうしたもんかと考えていると、
突然何かが覆いかぶさってきた。

105: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:10:33 ID:UFOzQrid0
それがサシャだと気づくまでに、かなりの時間を要したし、
それがサシャだと気づいた後も、しばらく呆けてしまった。

彼女は、俺を抱きしめながら、ぼろぼろと泣いていた。
良かった、良かったと、うわ言のように繰り返していた。
俺は、こいつよく泣くなあ、なんて考えていた。

106: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:17:18 ID:UFOzQrid0
サシャは泣きながら俺を離さなかったので、
しばらく片手で頭を撫でながらあやしていた。
そうしているうちに落ち着いてきたのか、すんすんと鼻をすすりながら
無事で良かったです、と今さんざん繰り返した台詞を吐いた。
無事で良かったな、と俺もサシャに返した。

107: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:20:11 ID:UFOzQrid0
ここから先は、サシャに聞いた話だ。


巨人化した俺の体は、敵を殲滅した後、蒸気に包まれて崩落した。
多分、そのタイミングで俺の意識が飛んだんだろう。
サシャは、エレンが巨人化した時の状況を思い出し、
まだ俺が生きていると踏んで救出してくれたらしい。

108: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:23:15 ID:UFOzQrid0
肉塊から引き抜かれた俺は、息をしてなかったそうだ。
サシャが半狂乱で蘇生術を繰り返し、一命を取り留めた。
道理でアバラが折れている訳だ。感謝しなくちゃな。

109: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:25:12 ID:UFOzQrid0
その後、気絶したオッサンと俺を洞窟まで引っ張り上げ、
救助が来るのを待ったらしい。

しかし、別の班も俺らと同様に巨人の襲撃を受けていた。
オッサン含め五人居た技術者達は全員無事だったが
全部で十名居た兵士は、三名まで減っていた。壊滅状態だ。
ちなみに生き残ったのは、俺とサシャ、エルヴィン団長だ。

110: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:29:23 ID:UFOzQrid0
俺ら以外の全員は、洞窟を探検し終え、崖を降りて待機していたところを
大猿と何体かの巨人に襲撃された。
非戦闘員を安全地帯に逃しながら戦っていたため、
何人もの兵士が犠牲となった。

111: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:31:34 ID:UFOzQrid0
そしてエルヴィン団長は、巨人の襲撃に備え、あらかじめ付近の村に
配備してあった調査兵団の精鋭部隊を煙弾で呼び寄せた。
なるほど、非情な判断だ。最初から現場に精鋭部隊を連れてこないのは、
不足する腕利きの兵士を、不意打ちの危険に晒さないためか。
後は、到着した部隊がサクッと駆逐したそうだ。

こうして、山の両側で展開された巨人の襲撃は、どうにか人間が勝ったようだ。
だが俺には、とても大きな問題が残されていた。

112: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:33:57 ID:UFOzQrid0
俺も、あのエレンと同じ、巨人だった。
全く訳が分からない。何でこうなったのか。
俺も、王都にとっ捕まり、裁判になり、地下牢にぶち込まれるのか。
下手したら殺されてしまうかも知れない。
クソ、偶然とはいえ、せっかく生き残ったのに。

113: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:36:40 ID:UFOzQrid0
俺が青い顔をしていると、
安心してください、とサシャが言った。
二人だけの秘密です、と。

114: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:38:22 ID:UFOzQrid0
そうだ。
冷静に考えてみたら、俺が巨人だと言う事は誰にも見られていない。
オッサンも気絶していたし、団長を含めた全員が、
俺らと同タイミングで襲撃を受けていた。
サシャ以外、俺のことを見ていないんだ。

115: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:41:29 ID:UFOzQrid0
サシャは、ぽつぽつと話した。

ジャンの事を黙っているのは、兵団に背く事になります。
兵士として、間違っています。バレたら、私も処刑されるかもしれない。
それでも私は、あなたの味方をします。
あなたが命を懸けて私を助けてくれた様に、
私も命を懸けて、あなたを守ります。


その言葉が、俺の心にコトリと収まった。

116: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:42:54 ID:UFOzQrid0
それに、ジャンが捕まったらデートに連れてって貰えなくなりますから。
サシャはそう付け加えると、悪戯っぽく笑った。

なるほど、わかった。
こりゃデートコースなるものを考えなきゃいけないみたいだ。
癪に障るが、エレンあたりに聞いてみるか。
よくミカサと町に出てるだろうしな。

117: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:55:14 ID:UFOzQrid0
終わり

119: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 01:58:57 ID:UFOzQrid0
長々とお付き合い頂きありがとうございました
初めてだったけど、これからもポツポツと書いていけたらいいなあ


120: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 04:30:41 ID:U0F+A4uNO

121: 名も無き被検体774号+ 2013/11/05 04:53:25 ID:tONQBEia0
巨人樹の森じゃなくて巨大樹の森な




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